『ファファモファマ』

竹に花の咲く年があった
人々は飢えの季節が始まると怖れた
戦く人々の背後に辻芸人が
いつの間にかすくっと立っていた
竹の実は? 竹の実は?
その声に人々は振り返る
竹の実は? 竹の実は?
辻芸人はそう問いかけながら
風にはためく黒い六尺褌の中へ
己が手を差し入れ
5本の竹輪を取り出した
竹の実は竹輪
そう言いながら
辻芸人は5本の竹輪を
己が口腔に捩込んだ
ファファモファマ、マママ
もう言葉は消えて
ファファモファマ、マママ
悲しそうな眼だった
ファファモファマ、マママ
竹の花が風に揺れる
ファファモファマ、マママ
飢えが呼ぶ狂気の予兆が
ファファモファマ、マママ
白い鴉がいつもと同じように夕焼けを告げる

 

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